2015年10月26日月曜日

「ビルを着る」


「ビルを着る」というタイトルから

ビルの窓から手足を出して天井を突き破り頭を覗かせたビルファッション、仮装なら有り得ますが、既存のビルを使用しては不可能です。今回は、作品の展示空間として使用したかった訳ではありません。又、店舗デザイン例として業界に向けた提案でもありません。
この表現は、着る事の比喩として私が空きビルと会話し格闘した痕跡なのです。
考古学者やプロファイラーの様に私が施したアプローチ以外に以前の住人の痕跡を読み取る事も出来ます。正直に言えば私は空きビルを紹介するだけでオフィスを試着させる事が出来たのかもしれません。壁の染み、天井の穴、床の傷、カーテン紐の陰、その一つ一つを私が意識した様に見学者もその細部に興味を持つのか、それとも、そこに展示された作品にしか反応しないのか、私は、それを想像しながら埃ですら拭き取るか、残すか、思考します。綺麗にする事の意味を問い直します。敢えて埃というベールをかける事も出来るのです。壁の穴は以前から空いていたのか、私が開けたのか、それは穴なのか、収納場所なのか不明です。又、壁から衣服の材料を採取する。床にメッセージを刻む、衣服は隙間に挟む、椅子は分解し壁に戻す、その場を撮影しその場に貼り付ける。その状況を最大限リスペクトする。約2週間このビルと切磋琢磨した事で考えるヒントを多く採取しました。自然から切り出し加工し計画された都市での生活を部分的に巻き戻し、別の方向に進める事で複数の物語を想像出来るという事です。それは、いずれ訪れる震災や事故、老い、死に対して、もう一つの意味を見つけるヒントでもあります。